第4章 アブで不器用
アブ「ん?」
「……もうやめにしませんか、こんなの」
確かに先輩と肌を重ねられる時間は私にとって幸せではあるけど、それはちゃんと恋人としてでありたい。…なんて思うのは先輩を本当に好きだからか、私が平和ボケした馬鹿なのか。
アブ「こんなのって?」
「付き合ってもないのにするのってどうかと思うんです」
いい歳して何言ってんだか。
「そ、それじゃあ…」
アブ「ちょっ、待って!」
車から降りる寸前腕を掴まれる。
アブ「ごめん…勘違いさせて」
勘違いってなに…まるで私一人浮かれてたみたいな言い方しないでほしい。
アブ「違うんだよ…」
聞いたことない弱々しい声を出す先輩。
アブ「ただ最初は仲良くなりたいって思って…でも話してみたら想像以上にいい子で…可愛いし…」
先輩、泣きそうになってる…
アブ「ちょっと焦ってたんだよ…でももういい人がいたらとか脈無かったらとか考えちゃって…」
アブ「でもあの日、我慢できなくて…それから二人きりになると歯止めがきかなくなっちゃって…ごめん…セクハラだよなこんなの…上司なのに最低だよ…」
「先輩…」
なんだそうだったんだ…確かに順序は違うけど。
私は、大きな先輩を抱き締めた。
アブ「!!!」
「私、先輩の事好きなんです…だから拒めなかったんです…これからもいっぱい愛してください」
アブ「……うん」
「でももう、会社でああいうのはやめてくださいね?」