第7章 7話
その日は少し寄り道をしたせいでいつもより一緒に入れる時間は短かった。
それでも彼とは有意義な時間を過ごせたと思う。
私「じゃあ、おやすみ。」
いつもの様に家に帰ろうと踵を返そうとした時だった。
私の肩に別の温度を感じて動けなくなった。
赤司「俺がこのままでいてほしいって言ったら楓はどうする?」
彼の両腕が私の肩を包むから私の心臓の音が聞こえないようにと思う気持ちがまた鼓動を早めた。
そんな私の気も知らず彼は耳元で囁き続けた。
赤司「俺はずっと一人でも大丈夫だ。でも、もし一つだけ欲を言わせて貰うと楓の1番でいたい。」
赤司「俺の問いの答えにはまた今度答えて。いつでも待ってるから。それから、俺はずっと昔から楓だけが俺の中の1番だ。これからも今までもだ。」
それだけ言うと最後に少し腕に力を込めて名残惜しそうに私から離れて行った。
きっと彼も私の答えを知ってる、だけど聞かないのは私の身の回りがまだ片付けられておらずじまいの中途半端さのせいだ。
でも、やっぱり。
私「征十郎ーー!!。」
彼は家に入る寸前だった。
私はこの短距離で全力疾走した。
そして、彼に私は初めて正面から抱きついた。
私「私はまだ、あなたの問いに答えてはいけないんだけど一つだけ。」
そう言って、私は彼の後頭部に腕を回し引き寄せた。
そうして近づいた唇に徐に私の唇を、重ねた。
所詮触れるだけのキスだったが、お互い何と無く名残惜しくて彼の後頭部に回した腕を唇が離れてからも抱き込んで私の胸に押し付けた。
彼の顔が見えない。
赤司「これじゃ、動けないじゃないか。」
彼の不満の声も全部私の服に当たって染み込むのが何だかくすぐったい。
私「もうちょっとだけだから待っててくれる?」
赤司「言ったはずだよ?俺はいつでも待ってると。」
そのまま少しの間だけ、私は彼を抱きしめたままだった。
彼もそんな私のお腹に優しく腕を回し包んでくれた。
いつもは背中でわからなかったけど案外広い彼の胸は男だと感じさせた。
それに安心感を覚えた。
赤司「そろそろ家に戻れ。俺が玄関まで送って行こう。」
私「うん。」
そう言って離れて行く体温が寂しくて彼の冷たい手を握った。
季節はもう冬を迎え入れようとしていた証拠だった。