第5章 5話
それからの私の行動は早かった。
私を拘束していた青峰くんを押しどけキセキたちの制止の声も無視して教室に飛び込んだ。
教室ではまさに事が起ころうとしていたようで机を持ち上げた逢沢くんが赤司めがけてぶつけようとしていた。
私「やめて!!!」
私の制止の声も虚しく彼は机を振り下ろそうとしていた。
はずだった。
逢沢くんが持っていた机は振り下ろされる事なく宙にあるままだった。
黒子「おいたが過ぎますよ。君も赤司君も。」
赤司「すまない、ただスリルがあってつい楽しんでしまったよ。」
その声と同時に私は走り出し、目当ての所まで行くと拳を握りしめ思いっきりシップの貼ってある頬を殴った。
赤司「いっ。お前、本気で殴ったな!!この前殴られたところだぞ!!」
私「うるさいっ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。」
驚きと安堵とで混乱した私はもうわけがわからなくて、こみ上げてくる物も無視してただ浸すら馬鹿とだけ言って彼を困らせた。
赤司「黒子。」
黒子「わかりました。後は任せてください。」
そう言って黒子くんは逢沢くんの腕を掴み立ち上がらせると教室から出て行った。
だから、今は教室に2人だけ。
泣きっ面の私と頬を抑えて顔を歪ませる赤司は互いに顔を見合わせて笑った。
赤司「まさか山吹が入ってくるとはな、予想外だった。」
私「すみませんでしたね、何せ何も聞かされて無かったのでね」
赤司「聞かされてないではなく、聞かなかったの間違いだ。」
私「も、何でもいーよ!!それより、ほっぺは大丈夫??」
赤司「さあな、お前のせいで口の端が切れたよ。本当に山吹は雌か?笑笑」
そう言って苦笑いしている彼の唇にまだ乾いていない血がついていた。
彼の唇は柔らかそうだ。
私「私が責任とっておまじないをしてあげる。」
私はそう言うと彼の制服のネクタイを引っ張り彼が怯んで少し屈んだ瞬間。
彼と私の距離はゼロになった。
彼の柔らかな唇は血で少し湿って、私の唇にもそれがうつった。
私「じゃあ。」
何だか照れ臭くなって彼の顔も見ずに教室から飛び出た。
部活に行っても、家に帰った後も唇は彼の感触をまだ敏感に覚えていた。