第4章 4話
それから本当に彼の家を訪れる日がどんどん少なくなっていた。
めげずに駄目元で行っても彼は通してくれない。
どころか最近では居留守を使ってくる。
彼なりの配慮が最早私にはやけくそに感じるのもあながち間違ってないのかもしれない。
でも、そんな彼が心配だったから彼を1人にしない為に毎日日替わりで潜入捜査員を私は送り込んでいた。
ブッブー
丁度その潜入捜査員からの報告のようだった。
黒子「もしもし」
そう、お察しの通り今日は黒子くんだった。
私「ごめんね黒子くん手を煩わせてしまって。」
黒子「いえ、ですが。2人とも何かあったんですか?」
私「まぁ。でも、聞かないで私達は大人になったっていう事だと思って自己解決してるつもりだから。」
黒子「そうなんですか?では何故、あなたは僕を送り込んでまで彼を1人にさせようとしないんですか?」
私「そ、うね。私なりに責任を取ってるつもりだから。」
黒子「 それは、どういう意味ですか??」
私「さぁ?じゃあありがとうね。」
割と素っ気ない返事をしてしまったことに後悔している。
向かいの家で2mくらいのこの距離で彼の部屋もリビングもダイニングも知ってるのに何だか今はどんな部屋だったかよく思い出せない。
ブッブー
メールの差出人は逢沢くんとなっていた。
この所彼ともなかなか逢えずじまいで結局今度は私が1人。
私「征くんの嘘つき。」
そう壁に呟いても壁の向こうを通り抜けるだけで返事は返ってきやしない。
もう最近は彼と登校を共にすることもなくて部活の事も何も聞けない。
またバスケ部の熱い先輩の話を聞かせて欲しいんだけどな。
ブッブー
私「もしもし、逢沢くん今大丈夫?」
逢沢「おー!!山吹か大丈夫!!」
私は最近、この時間を逢沢くんと電話やLINEで埋める事も増えてきた。
私がやってること本当に最低だと思うんだけど、きっと誰も私をけなしてくれないから打開策だけがなくてずっとこのままなんだろう。
逢沢くんは呼び出せば誰かさんとは違いすぐ来てくれるし、何より親身になって私の話を聞いてくれる。
ただ逢沢くんとの会話が弾み過ぎていた。
会話のキャッチボールにブレがなくいつでも私の思うことを思うように私を肯定してくれた。
逢沢くんが話すと私が全て正しい気がしてしまう。
「それはそうじゃない。」
あいつは私をよく否定した。