第3章 3話
それは幼稚園でのある日の事。
いつもいつも赤司の周りには女子が集まってきて所謂ハーレム状態だった。
彼は小さな頃から優しく品があり同級生の母親から絶大に支持されていた逸材だ。
あ、今とは違い可愛げがあった。
私はどちらかというとそんな女子に着いて行けず、小さい子特有の見えない敵と戦う戦隊ヒーローごっこにはまっていて隣にはいつも鼻垂れ小僧の少年を引き連れて今日も今日とて園を騒がしていた。
そんな幼稚園には年に2回お泊まり会というのがある。
決まって同じ組の女子や男子は親から離れる寂しさから泣いている子、逆に喜ぶこととでわちゃわちゃしていた。
私はこんな男勝りな態度をとってた癖に実はままっ子で隅でこっそり泣いていたタイプだった。
「泣かないで、俺がずっーと楓ちゃんを1人にしないから。」
「ほんとに?」
「本当だよ。俺が楓ちゃんをさみしいのから守るから、だから絶対1人になんかしないよ。」
「ありがとう、じゃあ私も何があっても征くんを1人にしないよ。」
あれは愛の告白とも取れるかもしれないけどきっとそうじゃない。
私は今のこの状態こそがあの時の言葉通りなんだと思う。
赤司「そんなこともあったかな。君を1人にしないって?」
私「そうだよ、だから征くんは1人になれないんだから!!お見合いの仲介だって私はやるぞー!!」
赤司「ははっ。征くんか...。じゃあ楓ちゃんが紹介した子が俺は気に入らなかったら?」
私「知らないよそんなの。」
赤司「楓が責任取るんだよ。」
ずるいずるいそんな言葉でそんないたずらが成功した顔して。
こっちの身にもなれって思う。彼の一言は私をおかしくする。
赤司「嘘だよ。第一彼氏がいるんだろ?いくら頼まれたとはいえ他の男の家に上がり込むもんじゃないぞ。」
私の少し上がった体温も鼓動も何だか虚しいだけになってしまった。
私「...そろそろ帰るね。」
赤司「待って。」
私「何?」
赤司「これからは俺は1人でも君なしでも生きていける。それに君にも彼氏がいるんだろ?ここにはもう来なくていいよ、君の母さんにも俺から言っとくから。」
そう言う彼は何だかいつもより綺麗に笑う。
菩薩のような慈悲深い笑みは私に反論の余地を与えさせようとしない。
そんなの卑怯だ。