第1章 みいつけた[黒子]
「誰かとお出かけだったりしたんですか?」
「違うよ!暇だったから、服でも買おうかなとおもって、一人でお買物なの」
「そうなんですか」
話したいといった割には、リアクションが薄い。
私の話つまらないんだろうなぁと一人寂しくなる。
「ははっ……ほんとは買うつもりなかったんだけど、いろいろ見てたらアクセサリーもほしくなっちゃって。似合わないのにばかだなーなんて……」
「似合うと思います」
「……え?」
黒子くんはこっちを真っ直ぐと見てる。
水色の瞳が、ブレのない視線を私に向ける。
「あなたなら、なんでも似合うと思います」
「そ、そうかなぁ?でも、ありがとう。嬉しい」
お世辞だろうなぁ。でも、想像もしてなかった人から褒められると少し嬉しかったのは事実だ。
「お世辞だと思ったでしょう?」
黒子くんの表情が少し曇った。
図星を突かれて、いや、でもそんな、と、私は言葉にならない。
「今度、紅崎さんがお休みの時、それを着て僕と出かけてくれませんか?」
……はい?!
今日の黒子くん、なんか饒舌?一緒に出かける?どういうこと?いいの?
「僕、あきほさんとデートがしたいです。ダメでしょうか」
ずばっとストレートな言葉に、心臓が早くなる。
顔が赤くなるのがわかる。
「……いいですよ」
彼のことは、確かに影が薄くて見つけられないことが多かった。でも見つけられたときは、見えなくなるまでその背中を見ていたのだ。
男の子にしては、すらっと細い背中が、こっそりいいなぁと思っていた。
「え、ほんとにいいんですか」
黒子くんは少し驚いてる。人をいきなり名前で呼んどいて、断られる気満々だったように。
「いいの。デート、してください」
彼の頬が、わずかに赤くなって、
爽やかな男の子らしい笑顔になったのを初めて見た。
素敵なデートになる予感がする。