第7章 番外編 ペンタス
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夏休みの東京遠征から帰ってすぐに3年の寺嶋翔が行方不明になった。
失踪する理由は特別見当たらなく、警察にも捜索願いを出したが手掛かりが何ひとつとして見付からず捜索はすぐに打ち切られた。
それから2ヶ月して、突然烏野のバレー部の大半が姿を消した。
もちろん、皆が失踪する理由などあるはずもなく1週間が経った。
誰もいない体育館。
何時もならボールが叩き付けられる音や、シューズのスキール音、皆の掛け声が響いてる時間。
しかし、そんな時間は1週間前から未だに訪れていない。
何の音も聞こえてこない体育館の入り口に佇みながら清水は小さく溜め息をついた。
烏野だけならず、聞く話によれば青城、音駒、梟谷の人達も何人か同じ時期に行方不明になっているらしい。
日に日に増すのは心配ばかり。
だけど、今は細かい事は考えないで皆が無事に帰って来てくれればそれだけで十分だ。
「清水さん?」
ふと、後ろから声を掛けられゆっくり振り向いた。
体育館へ続く渡り廊下の向かい側に顧問である武田先生が、紫陽花のような花束とその花を生ける為であろう白い陶器の花瓶を持ちニッコリ笑って立っていた。
「武田先生……」
「彼らがいなくなってしまってから1週間ですね。」
「……無事……でしょうか。」
前向きに考えなければと思うのに、1週間も音沙汰がないとどうしてもネガティブになってしまう。
そんな清水に武田先生がいつも皆に向ける笑顔でニッコリ笑いかける。
「彼らならきっと大丈夫ですよ。
信じて待ちましょう。」
それに、ほら……と持っていた花を清水に見せるとキョトンとした。
そういえば、どうして先生は紫陽花?の花を持ってきたのか。
教室に飾る為ならば体育館に持ってくる必要なんてないし、通り掛かったにしろここの体育館は校舎とは別なので教室に飾る為に持っていて通り掛かったというのはまずないだろう。
「綺麗でしょう、さっき寺嶋君のお母様が持ってきてくれたんですよ。」
「寺嶋の?」
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