第6章 勿忘草
遡る事数分前。
目が覚めた時には澤村はひとりだった。
辺り一面は闇で、何にもない。
怖いハズなのに、頭の中は妙に冷静で「あぁ、あの穴?に落ちたからか」などと事態を冷静に整理していた。
とは言え、なんにもない所で黙っている訳にもいかないので立ち上がり前後左右見てみるが当然何もない。
寧ろここは前後左右は愚か、上下すらちゃんと存在しているのだろうか。
どうしたものかなー、なんて腕を組んで頭を捻るが形だけで対策など出てきはしない。
だけどそれ以前に、いきなり変な学校へいるわ、鉈持った殺人鬼みたいな奴に遭遇するわ、女の子が目の前で殺されるわ、挙げ句の果てには底無し沼みたいな真っ暗闇の穴に落とされ皆とはぐれてしまい、今まさにひとりぼっちの状況で怖い要素など充分過ぎるくらいある。
なのに、今一番怖いのはそこまで怖い要素が幾つも存在してる中で、恐怖心よりも冷静になっている自分が怖い。
いつしか思考回路は「何で俺こんなに冷静なんだ?」と自分の心理に持っていかれ、真っ暗闇の中にいる事など二の次になっていた。
(お兄ちゃん。)
「っ!!」
暗闇の中に小さな男の子らしい声がひとつ。
驚いて辺りを見回すとすぐ足元に幼稚園児くらいの男の子がひとり。
その顔は無表情だがどっか寂しそうに見えた。
少し色の白い肌に真っ黒な服を来ているので、肌が見た目より白く見え、外国の子供なのだろうか、瞳の色は凄く綺麗な金色をしていた。
ただ、不思議なのは暗闇でその子の姿がハッキリ認識出来るのと、何故か怖さよりも懐かしさをその子に感じる事。
確証がある訳ではないが、この子に一度会った時がある……?
だとしたらどこだろう……外国の子供なんてここ暫く擦れ違った記憶すらないし、金色の瞳なら嫌でも目につきそうだ。
(お兄ちゃん、お姉ちゃんからお兄ちゃんを助けて。)
「え?」
*