第5章 リンドウ
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「あんた……こいつらを匿ってたね。」
フード越しに女性を睨み付けながら影が問い掛ける。
目深に被ってるから目など見えないのだが、口調で怒気が含まれているのは何となくわかる。
「……だったら何?
匿ってた所で、油断させて殺せば何の問題もないと思うけど。」
平然ととんでもない事を言い出す女性にギョッとする。
死亡フラグは中々回収されないらしい。
しかし、この場から逃げ出したと過程して……一面リンドウの花畑なので隠れる場所がない、即ちとても助かる要素がない。
どうする、と菅原と花巻が懸命に思考を巡らせるが考えは何ひとつ浮かばず。
「ねぇ、もう終わりにしましょうよ……憎しみなんて不幸しか作り出さないよ?」
「それは違う……憎しみがあるから、私が作り出されてお前も存在してるんだよ。」
「……。」
影のニタニタした笑いに女性が苦しそうに表情を歪めたのを菅原は見逃さなかった。
それに、影の言った言葉も気になる。
憎しみがあるから作り出された。
もしかして、影の正体は憎悪の塊か何かなのだろうか。
考える事に集中し過ぎた為、菅原は気付かなかった。
影が一瞬の隙を着いて菅原に持っていた鉈を勢いよく投げ付けた事に。
花巻が「危ない!!」と叫ぶも、反応が遅れ鉈は菅原のすぐ目の前に迫っていた。
もう駄目だとせめてもの抵抗とばかりに顔の前で両腕をかざすも痛みは一向に感じられない。
ソッと腕をどけ目を開ければ、女性の肩を視界に捉えすぐに息を飲んだ。
女性の肩から下は存在せず、代わりに菅原の足元に女性の失われた腕とリンドウの中に突き立てられた鉈が真っ赤な水溜まりの中に存在していた。
「お前……」
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