第4章 マリーゴールド
「……ぇ……。」
今、岩ちゃん何て言った?
「お前とは牛若倒すって、ここまで来たんだ。
だから多分、本物偽物を考えるより俺はお前を庇うと思う。」
「どうして?だって、俺……本物じゃないよ?」
「だーかーらー………………気にすんな。」
それに……
お前なしで全国行けるかばーか。
「……岩ちゃんが幼なじみで良かったってホント思う。」
及川がニコッと笑うと学校のチャイムが鳴り響く。
またか、と岩泉が耳障りなチャイムに眉をしかめると途端に睡魔が襲い掛かってきて、そのまま気を失ったままの研磨と共に倒れてしまった。
「……良かったの?」
今までいなかった女の子が及川に問い掛ける。
及川は一拍置いた後で、ヘラリとした笑顔でくるりと振り向けばそこには体を真っ二つにされ、頭を潰されたハズの女の子の姿があった。
「あれー?柊ちゃんじゃない、どうしたの?
及川さんに会いに来t痛い!!!!」
目線が同じになるようにしゃがみ、柊と呼ばれた女の子は、心なしか若干イラついた表情で容赦なく及川の顔面にパンチを食らわせた。
岩泉といい、柊といい、顔を狙われやすい及川だ。
「ちょっと、女の子がイケメンさんの顔にパンチとかダメだよ!!」
「イケメン?」
どこ?とキョロキョロ見回せば、その態度に再び泣き出す及川。
ご丁寧に両手で顔を覆っての泣き真似だ。
暫く放置してその姿を眺めていたが、不意に柊は口を開く。
「お疲れ様。」
その言葉で及川の泣き真似はピタリと止むが、顔を覆ったまま微動だにしない。
「頑張ったね。」
柊がそっと及川の頭に手を置くと、俯いたまま及川の腕が、柊を抱き抱えるように体に回ってくる。
そのまま抱き寄せられ、柊の胸の辺りに額を寄せる及川。
「……本物の俺が羨ましい……。
岩ちゃんともっと一緒にいたい……。」
「それは出来ないよ。」
「わかってる……言ってみただけ。」
「だけど、私がいる……それじゃ不満?」
「そんな訳ないじゃん。」
とっても嬉しいよ、と顔を上げ微笑めば先に戻ってるねと柊に告げてから岩泉に目を移す及川。
「バイバイ。」
それだけ言い残し、及川が消える。
*NEXT*
花言葉:マリーゴールド【悲しい別れ】