第4章 マリーゴールド
しっくり来るならばそれでいいのだろうが、目の前にいるのは幼なじみの形をした別のもの。
得体の知れない何かと息がピッタリでも、研磨と岩泉にしてみれば気味が悪いだけ。
ならばいっそデコボコで息が合わない方がまだましだ。
「ここから出られるんですかね?」
「さぁな。」
岩泉が希望でも絶望でもない返答をする。
今はまだそれしか言えないが、必ず戻れると心の隅では少なからず思ってはいる。
それは研磨も同じなので、特別岩泉のくれた返答に何も言う事は無かった。
クダラナイ。
突然、誰の声でもない女性の声が2人の頭の中に響く。
忘れたくても忘れられない今起きている元凶そのものの声。
どこにいるのかと探せば、ステージの上に黒い影が立っていた。
現れた時と同じ、黒いマントを着て右手に鉈を持っている。
黒尾と及川には見えてないのかなんなのか、気に止める事なく楽しそうに会話をしていた。
研磨と岩泉は素早く立ち上がると、身構える。
嫌でも体を真っ二つにして頭を潰された女の子が2人の頭の中を鮮明にフラッシュバックし、吐き気に襲われた研磨が口を押さえた。
「ちょっ……大丈夫か?」
「うん……なんとか……。」
研磨は大丈夫だと言うも顔色は青白く、具合が悪いことは誰が見ても一目瞭然だった。
が、今はどうすることも出来ず、何時襲ってくるかわからない影に岩泉が神経を集中させる。
影は何故か黒尾と及川をジッと見詰めていたが、すぐに岩泉達に顔を戻し舌打ちをした。
「幼なじみがどんなモノか見てみたけどくだらない。」
目深に被ったフードから忌々しげに下唇を噛んだ口元が覗いた。
くだらない、くだらない、くだらない、
そんな生温い感情が人を不幸にする。
見ていて腹が立つ。
「……死んじゃえ。」
口元がニヤリと、三日月みたいな形に変わったと思ったのもつかの間。
影と研磨の距離は3メートルも無く、気付いた時には影の持つ鉈が振り上げられ研磨の目には真っ赤な色が広がった。
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