第4章 マリーゴールド
「なんか……ここ、怖いってゆーより、当たり前の感じしませんか?」
「は?」
「……何て言ったらいいのかな……忘れない場所ってゆーか、思い出ってゆーか……。」
「思い出?」
「うーんと……あ……日常……。」
あれやこれや考えてたどり着いた答えがそれだった。
「日常って……こんな、薄気味わりぃとこが日常なんて……!!」
ハッとした。
真っ暗闇が一変して色のある景色へと姿を変えたのだ。
見慣れた床。
奥の方にあるステージ。
真ん中を隔てるように張られた2つのネット。
そこは、何日も、何時間も練習している体育館だった。
唯一異質な存在なのは、ステージの片隅に細い陶器の瓶に飾られているマリーゴールド2輪。
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