第2章 睡蓮
体全体に鳥肌が立ったと同時に、ゆっくりと開けられていた扉が弾かれたようにスパンと開け放たれ、廊下から水が流れ込み、あっという間に足首までを水に浸す。
見れば扉には既に何もなく、開けたらあるであろうナイフもそこには何もなかった。
廊下に広がるのは真っ暗な闇。
水浸しになっている事よりも、今はリエーフを襲ったナイフが気掛かりだ。
何時あのナイフが襲ってくるかわからない。
ナイフはどこに消えたと皆が眉を寄せる中、ゆっくりと何かが教室に流れ込んでくる。
何だと目を細めればそれはクルクル回りながら皆の前で止まり、プカプカ水に浮かぶ。
それは誰しもが知ってる花で、よくお盆時期に見る花だ。
「蓮の花?」
国見がボソリと呟く。
蓮の花と言えば蛍光色に近い桃色のイメージが強いが、目の前にある花はうっすら青い色をしていた。
「睡蓮。」
「?」
ぽつり呟いた聖夜の言葉に皆が注目する。
「あれ、蓮の花じゃないんですか?」
日向が聖夜に聞き返せば、違うと首を横に振る。
「蓮の花と睡蓮の花は似ていて間違いやすいけど、蓮の花は睡蓮に比べて、花弁に丸みがあるの。
その花は少し長細いから、睡蓮。」
「……睡蓮の花言葉は?」
及川が気になり、聖夜に聞く。
クロユリのように関係あるかわからないが、この場に花が流れてくるのがどうにも気になった。
他の皆も、クロユリの事情は聞いたので嫌でも気になってしまう。
数秒間を開け、聖夜はゆっくり口を開いた。
睡蓮の花言葉は
「滅亡。」
瞬間、スピーカーのない教室にどこからともなく学校で聞き慣れたチャイムが響き渡った。
そのチャイムは警報器のようにも聞こえる。
*NEXT*
花言葉:睡蓮【滅亡】