第12章 ウシノシタクサ
「日向!
大丈夫か、無茶ばかりして!
背中痛めてないか?」
「大丈夫です。
ちょっと強く打ち付けたかなー、くらいで大王様のサーブに比べたら全然。」
「いや、比較するものがおかしいだろ。」
それに、及川のサーブは殆ど西谷か大地がレシーブしてるだろ......
「けど、大事になってないなら良かったじゃないスか。」
あははと笑うリエーフの言葉に、東峰は「ホントにな......」と安堵のため息を深くつく。
何はともあれ助かった......
助かったが......
ここから出られるのは何時になるのだろうか。
単純に危機的状況を回避しただけであり、本来の状況は振り出しに戻っただけな気もする。
と、その時いつの間にか東峰の隣に移動していた男の子に上着の裾を引っ張られ、うおっ!と不覚にもビビってしまう。
「な......何、どうした?」
「日向とリエーフにも伝えて。」
「は?」
「ずっとお兄ちゃん達の事は忘れないからね.........って。
もちろん、お兄ちゃんの事もね。
それと、あの時黙って消えてごめんなさいって。」
「え?それってどういう.........っ。」
東峰が聞き返すと、途端に意識が遠退きその場へ倒れてしまった。
同様に日向とリエーフも気を失っている。
そして、東峰の背後には柊が立ち竦んでいた。
「直接伝えなくて良かったの?」
「そしたら僕、お兄ちゃん達もこちら側へ連れて来ちゃうよ。
そうしたら柊は困るんじゃない?」
「...雛がいつの間にか大人になったね。」
「煩いよ。」
柊の言い方に男の子はプクリと頬を膨らますと、フッと姿を消し、その場に残ったのは小さな烏の雛。
柊は雛を掬い上げると自分の肩にちょこんと乗せた。
烏はどこか寂しそうに柊の頬へ頭を擦り寄せる。
「これからはずっと一緒にいてあげるからね。」
だから、もう寂しくない。
*NEXT*
花言葉:ウシノシタクサ【あなたが信じられない】