第11章 番外編 オトギリソウ
「おや、聞いてませんか?
……もしかしたら、皆心配して敢えて伝えなかったのかもしれませんね……。
寺嶋君が疾走してから、2ヶ月……そしてその1週間後……つまり、今から2週間前には、バレー部の殆どが今行方不明なんですよ。
警察は再び捜索してはくれましたが、なかなか手掛かりが掴めないようで……。」
せめて、皆が無事かどうかさえわかればもう少し安心出来るんですけどね、と武田先生の目が悲しげに伏せられた。
それを見て小百合の口角が怪しく上がるが、目を伏せている武田先生は気付かない。
「大丈夫ですよ、先生。
皆は無事でいます、きっと帰り方がわからないだけですよ。」
帰り方がわからないだけです。
「え?」っと目を開ければ既に小百合は居なく、振り向けば出口の所に立っていた。
「私、そろそろ戻りますね。
あ……そうだ、その花……枯れそうなので私も明日、変わりのお花持ってきます。
ちょうど、ぴったりの綺麗な花を見掛けたんですよ。」
明日……
持って来ますね……
私の思いを沢山込めたお花……
オトギリソウって知ってますか?
花言葉は……
恨み
ね?
ぴったりだと思いませんか?
この惨劇に。
「それでは明日また。」
小百合はニッコリ笑い体育館を出て行った。
体育館には、不安な色を浮かべた武田先生が残されて。
何故だか、嫌な予感がした。
彼らは本当に無事なのかと……底知れぬ不安に襲われた。
*NEXT*