第3章 第三章『苦しい』
狐優side
・・・大人気ないな、僕は
自分を守るためだけに、嘘をついて、人を嫌って
可笑しいな、もう涙は止まったのに、まだ苦しいや
喉の奥が、ひゅうひゅうと音を立てていて
未だに声も掠れるし、喉の音は止まらないし
・・・僕が泣いているあいだに、こんなに時間が進んだんだ・・・
空の雲は茜色に染まり、少しずつ、時間と共に僕の上を過ぎ去っていく
陽が沈んでいく姿は、海の中にすこしずつ、どろどろと、溶けていくようだった
____僕もいつかあんな風に溶けるのかな・・・
嗚呼、夕飯を作らないと・・・
こんなちょっとしたことでも、早く家に帰ろう、と思える僕は、余程人に似ているのだろう
花音、何してるかな?きっと、寂しいよね。早く帰らなきゃ
僕は嘘つき。僕は妖。自分にそう言い聞かせてきた道を戻る
僕は、人じゃないから、君と仲良くはなれない
人と妖が仲良しこよしするなんて、見たこともない
それに、僕には何かを大きく変えられる力もない
そんな僕が人と仲良くするなんて、ご先祖様に汚名を着せるようなもの
それだけは、絶対にしてはならない
僕の力が薄れてしまうから
ただでさえ力の小さい僕は、昔から仲間はずれにされていた
だから、ここに一人で住んでいた
そしたら、彩夏がいたから、同じ仲間がいたから
僕は今までここにいて寂しくなかったんだと思う
僕なんか、どうせ力が弱いんだから
キュッ、と唇を噛み締め、足を早めた