第1章 Prorogue
「戸内くんをオトす?!」
帰り道、さくらがすっとんきょうな声をあげてまどかを見た。
「うん、硬派男子。今までありそうでなかったタイプだよ」
形の良い唇を楽しそうに吊り上げ、まどかは言った。
さくらは額に手を当てて大げさにため息をつく。
「オトすとかオトさないとか勝手にしていいけど、なんでまたあの人なんだか…」
「なにかあるの?」
さくらの発言が気になり、まどかは聞き返した。
腰に手を当て人差し指をピンと立てると、さくらはまどかにグッと顔を近づける。
「あるもなにも、頭良すぎて難しい人らしいし皮肉屋で有名だし…あんたみたいなタイプ、ぜーったい相手にすらしてもらえないよ?」
「んー…」
足元の石を蹴っていたまどかは、ぱっと顔をあげると、とびっきりの笑顔で言った。
「そーいうの、なおさら燃えるし!」
どうやってアタックしようかな~、とその場でくるくる回る彼女を、さくらは見つめるしかできない。
(昔からそう…ゲーム感覚で人に自分を好きにさせて。本人に悪気が無いところが罪だよなぁ)