第1章 episode Y
「やばいやばい!遅れる!!ちょっとどいてー!!」
どたどたと廊下を走って勢いよく顔を洗う彼の頭には盛大な寝ぐせ。
「…ってまだ9:00じゃん…。時間見間違えた。まだ寝れたじゃん…。」
そう言ってうなだれる彼が私に気づく。
「え、だれ」
急に目をギラッとさせて警戒する顔は、さっきとは全く違う人のようだ。
「えっ…と……」
「あ、翔ちゃんおはよー!どたどたはしんないでよー。家中揺れたー。……って顔こわっ」
え、なにがあったの?、と言いたそうな顔をして、私と櫻井くんの顔を交互に覗き込む相葉ちゃん。
三人の間に長い沈黙があった。