第10章 36日目
「翔ちゃん、相葉さん遅くない?」
3DSに使いすぎた視力を休ませ、凝った肩をバキバキいわせながら、新聞を読む翔ちゃんに話しかけた。
「…確かに、遅い、ねえ。」
と新聞に夢中な翔ちゃんは答えを返してくれるが、その視線も気持ちも、俺にはない。…くそ、待合室のソファーに腰掛けすぎてもはや腰が痛てえわ、あいバカ。
今日は朝からPV撮影であとは個人撮りで終わりだってのに、相葉さんが楽屋を出て行ってから約2時間、PM10:00を過ぎる頃。潤くんでもあるまいし、あなたになんのこだわりがあるっての、と心の中ではグチグチ言っている私に、翔ちゃんが口を開く。
「…珍しいね、普段時間なんて気にしないのに。」
翔ちゃんがやっと新聞から視線を外した。
「え?そうだっけ。」
「うん、二ノは遅くなっても愚痴言わないタイプ。」
「へえ、知らなかった。」
「なんかあんの?」
と言われて少し困る。いや、別に約束なんてしてないし、忘れてるかもしれないけど、家にいるであろうその人に期待している自分が急に恥ずかしくなった。
え?俺、なんか変なこと言った?と翔ちゃんが笑う。それに答えられないでいると、ああ、そうか、と何か閃いた顔をした。
「今日は二ノの誕生日だもんね。」