第9章 35日目
携帯の番号を交換して、よしっと呟くと相葉さんはまた仕事に戻ると言った。
「え、今からですか?」
「うん、そうなの!ラジオの収録があってさ。」
腕時計をチラッと見ると、時刻は20時過ぎ。
「…凄いなあ、相葉さん。」
相葉さんを、嵐を、テレビで見ない日はない。そりゃそうだ、こんな時間からまたお仕事するんだもん。活躍は嬉しいけど、正直少し心配になる。
「二ノだっていつも遅いでしょ?寂しくない?」
と、その「寂しくない?」は二宮くんがいつも言う意地悪なソレとは違って私を思う優しい言葉。
「大丈夫です!寂しいなんて言えないくらい、家の録画記録には嵐がいっぱいで…」
「はは、1人で見てるんだ!」
「はい、相葉さんも二宮くんも、嵐は凄いです。」
私が感心していると、いつもニコニコした相葉さんが「そんなことないよ。」と大人の顔をした。
「楽しいからね、仕事。」
そう言える相葉さんはカッコいい。
「二ノも俺も楽しく仕事出来るのは、見てほしい人がいるからだよ。意味、わかる?ちゃん。」
相葉さんが優しい顔で私を見る。わかります、嵐の良さはそこにあるんです。
「はい、ファンの人がいるから、ですよね?」
私の問いに相葉さんが嬉しそうに眉毛を下げて笑う。
「もちろんそれが第一!…なんだけど、ダメなんだけど、やっぱ俺らも男な訳で、30過ぎの男子な訳で、一番にカッコいいと思われたいんだよね、好きな子には。」
「……す、きな…子、」
相葉さんが何かを訴えるような目で私を見る。やめて下さい。勝手に顔が緩んできます。
「ちゃん、よく二ノにいじめられるでしょ?」
「…え!?」
「俺、そういう趣味ないけど、少しわかる気がした。今の反応。ちゃんっていじめたくなる!」