第8章 34日目
「あー、うるさかった」
皆が居なくなった部屋でソファーにもたれる彼が天井を向いてため息をつく。
「ふふ、楽しかったね」
「えー、楽しくないよ、疲れた」
「お疲れ様です」
座った彼が私を見ると、さっきまでの無邪気な顔はどこへいったのか。
目の前の彼は色っぽく笑う、男性の顔をしていた。その違いに、私の心臓が音をたてる。
少しの沈黙のあと、彼が私の指を触りながらゆっくりと話始める。
「最初はさぁ、めんどくさくて」
「う、ん?」
「あの人達が家来るってなった時」
「あ、ああ」
優しく触れられる指がくすぐったくて、話に集中できない。
それはわざと、なのか。
「でも、いいもんだね」
「……」
「人が家に来るってのも」
「……うん、そうだね。
ちゃんと紹介してくれて、ありがとう」
「…や、別にそういうわけじゃ、」
二宮くんは照れ屋だ。私が恥ずかしがる言葉は簡単に言えちゃうくせに、自分のこととなると途端にはぐらかす。