第6章 32日目
家に着くと勢いよく鍵を開けて、靴も揃えずにリビングの扉を開けた。
「…に、のみやくん、」
ソファーに体操座りしながらテレビを見ていたであろう彼女が、目を丸くしてこちらを見ている。
「お、かえりなさい!」
すぐに向けてくれたその笑顔に力が抜けた。
「た、ただいま…、」
ソファーに座って彼女を抱きしめると、その香りにまた安心する。
「いい、匂い」
「あ、お風呂、入ったよ?」
「うん、そうじゃなくて、」
「うん?」
「の匂い」
「え、あ、うん」
「寂しくさせて、ごめんね」
もう一度力を入れて抱きしめると「うん」と弱い声が返ってきた。
馬鹿は私だ。
「私が狼になっても嫌いにならない?」
「え?」
「寂しくさせないから、」
「……」
「嫌われるのが怖いんだ」