第5章 31日目
右手にはゼリー、左手には紙切れを持ったまま時計を眺めていると、リビングの扉がガチャっと音をたてた。
開いた扉から顔を見せたのは、久しぶりに見る彼。
「…?」
「……に、にのみ「おい、」」
感動の再開かと思いきや、彼の視線が私の右手に向く。
「………あ、」
「あ、じゃない」
「ひっ、」
「覚悟決めたってこと?」
「あ、いやこれは、その」
私が勝手にあたふたしていると、彼が「うーそ」とフンワリ笑って私に近付いた。
「…ただいま、」
「おかえり、なさい…」
なんだか色んな場所がくすぐったくなるような言葉。初めて顔を見て言えた言葉。
「だいぶニヤついてますけど」
「ごめん。つい、」
私が謝ると、彼がいつもの顔で笑って
「とりあえず、会えなかった分のキスさせて」
と、私の頬に手を添えた。
『 ただいまの後はおかえりのキスで 』END.