第5章 31日目
疲れていたはずなのに彼女らしい、丁寧な文字を見ると思わず笑ってしまった。
顔が見たくなって飯を食べる前に1度寝室へ向かう。
起こさないようにゆっくり扉を開けると、静かに寝息をたてるパジャマを着た彼女が自分のベッドに横になっていた。
自分のベッドに人がいる。自分の唯一の侵されないテリトリーに人がいる。
私には絶対に入られたくない一定の距離があって、自分からは人に踏み込んで行けでも、その領域に踏み込んで来る人はどんな人でも拒絶してしまう癖があって。だから人を家に入れることなんて、 今までなかったのに。
なぜだろう。
そんな私が彼女には最初からそれを許していた。
寝顔を見つめて、やっぱり自分には彼女しかいないんだと確信する。
もう2度とこの手は離さない、そう決めて。気持ち良さそうに眠る彼女の額にキスをした。