第4章 30日目
「もっと泣きたいの?」
「え?」
「ここで、最後の思い出つくろっか?」
そう言って優しくベッドに私を押し倒すと、突然天井が見えて視界が変わる。
「え、な、思い出、いらないって…!」
「うん、気が変わった。あなたのせい」
そう言って私の唇を親指でなぞる。
「…二宮、くん、時間がっ…」
「私の好きな顔で沢山泣いてね?」
「やっ…」
「ああもう、」
「好きだよ」耳元で囁くその低くて優しい彼の言葉で何度も何度も失神しそうになった私。
『 私だけの泣き顔を見せて 』END.
「二宮くん、」
「……」
「か、和也くん!」
「何まだ足りない?」
「ち、違う」
また顔を赤くする彼女。
「私が言うのも何ですけど…
早くしないとお引っ越しが、」
「もう引っ越しやめよっか」
とベッドから出ようとする彼女の腕を引っ張り、また胸に引き寄せた。
「和也くんダメです!」
「………」
「……、和也くーん?」
「…、その和也くんっての、
もうやめなさい」
「え!なんで」
「…なんか色々、止まんなくなる」
楽しみしか無かったこれからの生活に、彼女の何気無い行動や言葉に耐えられない日々が続くと思うと。自分の理性が持つかどうかが、少しだけ心配になって。
そうしてまた頬を赤く染める彼女を押し倒す私。