第3章 29日目
すると突然、左耳に電気が走るような感覚が飛び込んできた。
「…ひぃあっ!」
驚いて目を開くと、自分唇に舌を右から左へ沿わせる彼が目を細めて私を見る。
「私、耳ケガしてないけれど!」
舐められた左耳を手で押さえて抗議を申し出た。
「だって治してくんないんだもん」
「だだだだからこれ!」
消毒液を見せつけると、そんな私をバカにでもするように「ふっ、」と笑う彼。
「それ、効かない」
「……効かないって、」
ただしみるのが嫌なだけなんじゃ…、
「早く、おいでよ」
両手を拡げて私を迎え入れる体勢バッチリな彼に何を言っても無駄なのは、私が1番わかってる。
私がおとなしくそれに従って傍に行くと、ギュッと抱き締められて
「ほら、治った」
私を抱き締めた腕をほどき、傷のある方の頬を見せつける。
何にも変わってないんだけどなあ、とか思いつつ。自信あり気に可愛らしく微笑む彼に思 わず笑いがこみ上げて。
その可愛さに私の母性本能はヤラれたのか、思わずその傷痕にそっと唇を当てると、驚いたように目を開く彼。
「お薬」
そう言うと「生意気」と笑って私のそれとは全然違う、優しくて甘いキスを何度も何度も落とした。
『 傷付いたら手当して 』END.