第15章 41日目
美嘉、と彼女の名前を出した瞬間
うっすら揺れるその瞳は
俺が心を許したと期待する彼女の癖。
俺らはお互いの癖や苦手や好みを
自分のモノにして
それを計算して味方に出来るくらい
お互いのことをわかっていて
それは彼女が言っていた
「似た者同士」
だからなのかもしれない。
だからこそ、
「期待なんか、させないよ、俺」
彼女の瞳がまた光を落とす。
「私が入る、隙もないって?」
「…美嘉、違うでしょ」
「何が?」
「美嘉の俺に向けるそれは愛だの恋だの
そういうんじゃないって、
わかってんだろ、自分でも」
触れなくても
彼女の身体が強ばるのがわかった。
「似た者同士」だからわかる
彼女にあるのは歪んだ感情。
「…なんで、なんでかずだけ」
唇を噛む彼女の呟いたその一言に
すべての意味が含まれて。
妬み憧れ嫉妬切望
その満たされない想いには
彼女にしかわからない痛みが隠されている。
「美嘉、俺は何もしてやれないし、しない
それはもう俺の役目じゃないでしょ」
彼女の悔しそうなその表情は
ただの思い通りにならないことへの
苛立ちだと思って。
また、突き放し方を間違えただなんて
この時は思わなくて。