第13章 39日目
普通の女子ってこういう時
少しだけ頑張りを見せると思うんですけど
彼女はすでに寝室で1人
あっさりぐっすり睡眠中。
寝ている彼女の髪の毛を
撫でるように触ると
眉がピクッと動いた。
「…ん、に、もむゃく、ん」
「………、」
誰それ。
「…うん、二宮くんだよーって」
「…おかえり」
眠たそうに目を擦り
寝返りをうつように
体をこちらに向けてくれる。
枕に頬を寄せる彼女が
余りにも穏やかで
気が抜けてしまった。
「…腹、へった」
とそのまま上半身だけをベッドに倒し
彼女に顔を近づける。
「…ご飯、いらないって
食べてないの?」
「…うん、腹、へった」
「…作ろっか」
「…いや、風呂入ってもう寝る」
「…大丈夫?」
「手伝って、風呂」
「…二宮くん、もう30のおっさ「アイドルだわ」
なんでだろう、
きみと一緒にいられる理由がわからない。
1人でも平気な俺が
初めて人に会わないでいる期間を
寂しく感じた。
むしろ1人がいい俺が
人と一緒に住んで
毎日家に帰りたいと思った。
あの時決めた。
もう、この手は離さないって。
「…二宮くん?」
考え事をする俺を覗き込む彼女に
「おいで」と手を伸ばす。
きみを引き寄せて
初めて違う女の人の名前を思った。
美嘉、ごめん。
他は全部渡すから
この場所だけは。
END.