第12章 38日目
叔母と叔父が懸賞で北海道旅行を当てたらしく、2人の息子である、従兄弟の隆太(3歳)を預かることになった。
「隆太、2日間、ママとパパ居なくても大丈夫?」
「うん、ちゃんいるからだいじょおぶ。」
「隆太、偉いね」
「うん、ぼくいい子!」
「あ、隆太!今日は二宮くんも一緒だよ。」
子供は得意じゃない、と言う二宮くんが隆太にニコッとわざとらしい笑顔を向ける。
「……だあれ?」
「えっとね、こちらは二宮くん。」
二宮くんに手を向けて、丁寧に紹介をした。叔母の家はテレビをあまり見せない家庭らしく、隆太に嵐って知ってる?と聞いたら、不思議な顔をしていたので、預かるのを引き受けた。
最近は3歳でもアイドルに詳しいから侮(あなど)れない。
「…にい、みやくん、」
私のマネをしようと、一生懸命口を動かす隆太。うーん、少し違うんだな。
「うんとね、にのみやくんだよ。」
「にのみ、…くん、」
隆太が難しそうに私を見ると、二宮くんが「りゅーた、」と呼んだ。
「に、の、み、や」
一言ずつゆっくり口の形を見せると、隆太が小さな声でマネして口を動かす。
「にのみ?」
「…うん、もお、にのみでいいや。
ほら、りゅうた、
にのみの言うことはちゃんと聞くんだよ。」
「あい!」と元気よく返事をして、持ってきたおもちゃで遊び始める隆太を見て、満足そうな二宮くん。
苦手だと言ったわりにはちゃんと会話をしてくれることに驚いた。そんなことを考えていると、
「その熱い視線はなに?」と聞かれる。
「…にのみ、ですか。」
「え?だめ?よくない?にのみ、」
「……にのみ、さん。」
「ちょっとその呼び方、
お昼のあの方連想させるからやめなさいよ。」
「あ、ああ!そうだね」
「和也さん、とかどう?」
「あ、いえ、大丈夫です。」
「けち。」
二宮くんに慣れすぎて、やっぱり和也はハードル高すぎます。