第39章 獣の願い [黒尾×灰羽]
白い広間へつくと、そこにはリエーフがいた
淡い光に包まれて眠るリエーフは、身体中に真っ赤な血を纏っていた。傷口こそないものの、矢が刺さっている
「・・・リエーフ?」
俺が付けたその名前を呼ぶと、リエーフはゆっくり目を開けた
「あっ……クロ…さん…。よかった……ヒナタ達に…助けて…もら…」
「リエーフ…ゴメンな…お前をこんな目に…」
と、俺はリエーフを抱え謝った。
こんなもんじゃ足りないだろう・・・
俺は、こいつを騙して・・・子供のこいつを・・・
「俺…分かってました…あのダイオーサマの道具にされるって…家族をみんな殺されて…もう俺には居場所はないんだって…」
「リエーフ……」
「でも…、俺…ここに来て…よかった…だって…クロ……」
と、言葉を並べるリエーフだがその身体はすでに消えかけていた
蘇生の魔法がリエーフの身体を消そうとしていた
「・・・リエーフ、お前にまだ教えてない言葉があった・・・」
「えっ……」
「いいか?一回しか言わねえからな…」
キョトンとするリエーフを抱きしめて、俺は彼の首元に顔を近づけて・・・
好きだ・・・
「えっ…?す……き?」
「これはな、そばにいてほしい人や大切な人に伝える言葉だ・・・だから、俺は今お前にこの言葉を教えてやる」
「・・・じゃあ、俺も…クロさんが…好きです。」
と、ニコっと笑う
その表情は、獣なんかじゃない
ちゃんとした感情を持った人の顔
「・・・もっともっと好きなら、大好きって言うんだぞ」
「・・・大好き……クロさん……大好………!!!」
そこで、リエーフの声が途絶えて、俺の手の中にあった温もりが消えた
俺は、なくなった温もりを噛み締めるように手の中に顔を入れて泣いた
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