第3章 小さな剣と大きな盾 [東峰×西谷]
何とか警備員の御咎めも済み、映画館に入った。
ポップコーンを買い、座席に座ったが何にも会話はなかった。
「旭さん、スンマセン。俺のせいで…」
「西谷………。」
俺は、今までにないくらい低い声を出した。
「はい…。」
「頼むから、二度と今日みたいなことはしないでくれ」
西谷は、目を丸くして俺を見た。
「旭さ……」
「今回のことは全部俺が悪い…立ち向かえなかった俺が悪い……。だから……」
俺は、座席の膝おきに置いてある西谷の手を握った。
「だから……頼むから……俺のせいで……傷つかないでくれ……。」
俺は、今にも泣きそうになりながら声を振り絞った。
「旭さん、俺はリベロです。エースの道を開いて、背中を守るのが俺の仕事です。旭さんを守るのは当然っすよ…。」
西谷も泣きそうな声で言った。
俺はそんな西谷の頭を撫でた
「それは、コートの中の話だろ?コートの外に出たら、俺が守れるようにする。」
と言い、握っていた西谷の手に優しくキスをした。
「…………。旭さん……。」
「ん?」
「俺やっぱ、旭さんと付き合ってよかったっす!!」
いつもの笑顔……。
「旭さん、大好きっす!!!!」
「俺も…大好きだよ」
正直、俺なんかじゃこんな逞しい西谷は守れないだろう…。
俺が持つのはきっと、とてつもなく小さな剣
西谷が持つのはきっと、何者にも負けない大きな盾
きっと役には立たないだろう…。
でも、俺はこの大きな盾にいつも守られている
だったら戦わないと…
守られているだけじゃなく、戦わないと
この、たった1人の大切な盾のために…。
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