第1章 ホテル
そのホテルは人里離れた山の奥にあった。
噂では、かなりの男前が揃っているとか。
疲れた女の心を癒してくれるホストのようだ、と
そんな馬鹿な噂を信じたわけではなく
そのホテルは何故か予約が取る事が困難で
当たる事が夢のようだとも噂されていた
人間は
そんな噂に興味を持ってしまう悪い癖がある
私も遊び半分で、
当たるはずないホテルに予約してしまったのだ
そして、今までくじ運のない人生の私が初の当たりを引いてしまったのだ...
私は予想以上に威圧感のあるホテルに驚いていた
「かなりの年期の入った建てものだよねぇ...」
私は中に入らずに建物の周りを見て回った
外から見て私は不思議に思った
どの窓も、厚いカーテンで閉められている
私は窓に近づき中を少しでも見ようとした
その時だった
「....何か御用でしょうか?」
私が驚いて振り向くと
厚い黒のコートを頭から被って、
腕には花束を持った人が立っていた
声からすると女だった
「あっ、予約していた者なんですが...、
あまりに綺麗な建物で...」
私は咄嗟に嘘をついた。
女は私の言葉を静かに聞くと、深めのフードに被った顔を少し上げて建物を見た
少し女の顔が見えた...
目が金色?
私が思った瞬間だった
「お客様でしたか、それは失礼しました...
どうぞ、こちらへ御案内します..」
女は、長いコートを引きずりながら私の前を歩いた
私は思った、この女はここの従業員?
男ばかりのホテルとはネットのデマだったのかと
私は大きなロビーに案内された
すると、女はゆっくりと
目深に被ったフードをとった
「今、係りの者を呼んで来ますので...」
そう言うと、動き始めた瞬間に彼女の前に男が立っていた
いつ来たのか、空気のように存在感がなかった
男は少し女に目をやると、私に目線をやり微笑んだ
横山「いらっしゃいませ。
お客様、お待ち致しておりました」
そう言うと頭を下げた。