第2章 あたし、メイドになります
プルルルル…プルルルル
呼び出し音が3回くらい続きやっとお母さんが出た
お母さんに事情を話すと泣きながら
「桜が決めたことなら頑張りなさい
迷惑にならないようしっかり働いてきなさい
つらかったらいつでも帰ってきていいからね
…もし好きな人ができたら一番に教えてね?」と
電話の向こうで言った
あたしをここまで育ててくれたお母さん
つられてあたしも泣きそうになる
「これ、使ってください」
隣に座っていた男性にハンカチを渡される
先程の人と全然違う、大人な印象の男性だ
『あっ、すいません…』
涙を拭き彼に渡す
彼はハンカチを丁寧に畳みポケットに入れる
仕草が完璧な彼にあたしの心臓はなぜか
激しく動く
しばらく車に揺られると立派な屋敷についた
大きな門に美しい花の庭園
一般人として育ったあたしにとっては
驚きであり未知の世界でもある
誘ってくれた彼と一緒に屋敷の中に入り
今日から主人となる方の部屋に向かった