第5章 再開
「なら、俺達も付き合わないわけにはいかないっすね!」
「しゃあねぇから一緒に怒られてやるよ。」
「俺も同意見だな。」
紫原君の顔を見ると彼もニッコリ笑ってくれて、つられて私もニッコリ笑う。
ここにきて笑うのは征十郎に抱きついたとき以来だ。
「じゃあ開けますねー。レッツオープン!」
鍵穴に鍵を差し込み扉を開ける。
そこには目を覚ましたときと何一つ変わらない音楽室があった。
念のため内側から鍵をかける。
「それにしても、部屋の中に鍵を置くとか意地悪っすねー。」
「そうだね。私もあの時、鍵を見つけなかったら永遠にこの中だし。」
今想像してぞっとしたよ。あのままずっとこれだったら私どうなってたことか……!
「じゃあ黄瀬と紫原はそこの楽譜が入ってる棚な。背が高い二人なら一番上も届くだろ。渡辺さんはもう一度ピアノを頼む。青峰と俺は机だな。」
上級生らしく指示を出す姿は先輩って感じがした。ダジャレなら俺に聞けとか言ってるときとは全然違うよー!?
と叫びたいのをこらえてピアノを調べる。さっきと同じようにふたをふたたび開ける。
…ダジャレ狙ったわけじゃないでーす
「うーん…なんでこのピアノ鍵盤ないんだろ…。古いのかな…。」
見た目は超立派だからすごくもったいない。ダメもとでピアノの下に潜り込んで何か落ちてないか探してみる。
「何もないか…イテッ!」
気を緩めてしまい、ピアノに頭を思いっきり打った。
「あれ?なんか書いて…」
ピアノの下の面に、赤い色で何か書いてあった。何だろう、と思ってゴロンと寝転んでみると
ツギハオマエダ!!!
と書いてあった。
即座にピアノの下から出た。
「……っ!」
見てない見てない何も見てない。忘れるのよ私!
頭を抱えて立つ力もなくその場にペタンと座る。
でも、真っ赤な文字はなかなか頭から消えてくれない。
「あれれー?渡辺ちんどうしたのー?」
「む、むむむむ紫原…君」
「え、どうしちゃったわけー!?」
ガタガタ震えている私を見て珍しくあたふたとあわてだした。
「えぇ、ちょ、えぇ!?さ、寒いの!?」
やけに記憶にこびりついたあの文字がフラッシュバックする。
もう頭が真っ白になって体が地面に倒れた。