第2章 【短編】溶け合った希望
『…なるほどな。リヴァイ、いい加減離してやれ。』
『……了解だ、エルヴィン。』
彼が私を離すのを確認した後、金髪の人は黒髪の人に後は任せたと告げて部屋を出ていった。二人だけになった部屋には黒髪の人の舌打ちがよく響いた。それはまるで"面倒だ"と言っているみたいだ。正直居心地も悪いし、さっさと用事を終わらせて貰おうと口を開いて先を促そうとした時。
信じられないことに彼は、徐に手を伸ばして私の頭を乱暴且つ優しく撫でてきた。まるで、よくやったと褒めるように。その温かさに、力強さに抑えていた何かがこみ上げてくる。
私は大切な人たちを守れなかった。目の前で失っていく絶望に胸が苦しかった。今だって痛くてしょうがない。きっとこれが報いなんだ。皆を救えなかった、私なんかが生き残ってしまった罰なんだ。こんな苦しみを味わうならいっそ殺してほしい。…なんで、なんで私は生きてるの…、っ!
ぐっと唇を噛みしめて涙を耐える。痛みを耐える。そんな私を見つめる目の前の男の眼差しは何処か温かくて耐えるのを忘れそうになる。
『おい、女。』
『……は、い。』
『きっとその大切な仲間とやらは安心して成仏しただろう。お前が仇を取ってくれたお陰でな。』
『…っ…そ、んな、こと…きっと、皆は…っ、』
『恨むわけねぇだろう。お前はこんなに頑張ったじゃねぇか。』
『!』
『胸を張れ。自分の足でしっかり立て。生きろ。じゃねぇと、死んだそいつらに示しがつかねぇだろうが。』
『ぁ…あ…み、んな…』
ふっ、と今までの皆と生きた道が頭の中で映像として通り過ぎていく。涙が溢れていく。…みんな…私、頑張ったよ。ねえ、どうして誰もいないの…。
ねえ…、ねえ…っ…
私はこれからどうしたらいいの…?
『っく…私、どうしたら、…っ…』
『お前は何をしたい。』
『…え、?』
『自分のしたいことをすればいいだろう。それから探せばいい。お前の新しい生きる希望をな。』
『…生きる、希望…』
『言え。お前は何をしたいんだ。』