第2章 【短編】溶け合った希望
─…その時のこと、それから後のことはあまり覚えていない。ただ、目が覚めたら、金髪蒼目と黒髪黒目の男性2人が私を鋭い瞳で見下ろしていた。どうやら彼らが言うには、私が立体なんとかを使わずに傍に落ちていた鋭利な刃物2丁だけで巨人を5体も倒したんだとか。きっとその5体は私の5人の大切な人たちを喰った奴らだろう。そのことに少しだけ報われた気持ちになり、小さく笑ってしまった。なかなか不気味だっただろうか、2人の空気が動いた。
そして気がつけば、黒髪の男性に胸倉を掴まれていた。
『てめぇは何者だ。人間なのか。』
『…それ以外の何者に見えるのですか。』
『そんなひ弱な体型で、しかも立体機動装置もつけねぇで巨人5体も討伐出来るはずがねぇ。』
『そもそも私はその時のことを覚えてません。私ではないのなら他の人なのでは?』
『いや…私たちは確かに君が巨人を倒していくのを見た。』
『じゃあ人間だと思わなくていいですよ。別に殺してくれたって構いません。』
寧ろ殺してほしい。そう呟いたとき、目の前の黒髪の男の瞳が光った気がした。じっとその瞳を見つめて、ああ…少し目を見開いたのか、と納得した。分かりにくいしどうでもいい。が、その色が刺々しいものではなくなった事に内心首を傾げる。
しかしそれはほんの一時で、一度瞬きをすればあっという間に殺気が戻っていて私に視線を貫いていた。が、先程とは打って変わって口を開こうとしない黒髪の彼。そんな彼に変わって金髪の人が黒髪の横から私に語りかけてきた。
『君は何故巨人の弱点を知っていたんだ?』
『色んな事、たくさん勉強しましたから。生きるために。』
『…だが、怖くなかったのかい?』
『何がでしょうか?』
『戦うことだ。あんな大きな敵に1人で立ち向かうなど、普通なら出来ないことだろう。』
『…私の仲間は、私の生きる希望でした。それを目の前で奪われて"普通"でなどいられると思いますか。』
答えは…否、だ。