第2章 【短編】溶け合った希望
『…皆を、守りたいっ…』
口をついて出たのは、その言葉だった。私の守りたい"皆"はもういない。でもそれが一番したいことだった。罵倒されるかな、と恐る恐る彼を見上げれば無表情で何も分からなかった。でも彼の声は優しかった。
『なら、とにかく生きるんだな。』
『…?』
『お前が覚えててやらねぇと、その仲間の存在は完全に消えちまうだろうが。』
『!』
『それに、生きていればまた仲間も出来る。』
『ぁ…』
『そしたらまた、守ればいい。』
『っ、はい!』
『…俺が手伝ってやる。お前を強くしてやる。だから、』
一緒に来い。
───
そうして兵士になった私。訓練兵団も無事首席で卒業して、調査兵団に入った。訓練兵団で首席がとれたのは、リヴァイ兵長のお陰だ。普通の訓練の前と後、彼はわざわざ時間を割いて私をしごいてくれた。
金髪の人…基エルヴィン団長は、調査兵団に来た私を見てとても喜んでくれた。やはりリヴァイに任せて良かったと言っていた。彼が私の成長を望んでいたのは分かったが、それを見通していたかのような言い回しに、侮れないなと尊敬に尊敬を高めたのは言うまでもない。
私は調査兵団に所属して間もなく、リヴァイ兵士長の補佐へと抜擢された。それは私にとってすごく喜ばしいことで、思わず抱きついたのはあれが最初で最後だ。思えば彼は潔癖性だというのに、大変失礼なことをした。でも何も言ってこなかったのは、彼の優しさだろう。
初めての壁外調査は辛かった。
食べられていく仲間達がかつての仲間と重なる。短い期間でも私の大切な人たちに違いはない。仲間をまた守れなかった後悔で押し潰されそうで、苦しくて苦しくて、死んでしまいたくなった。でも、私は死ねない。まだ私の大切な人たちは全滅してないし、私が死んだら今回食べられていった彼らの犠牲を蔑ろにしたことになる。こうして生き延びたのだから、彼らの分まで生きて彼らの大切な人たちも守らないと。私が、守ってあげないと。