第2章 【短編】溶け合った希望
私はこの世界に産み落とされた瞬間、独りになった。捨てられたのだ。
マリアの片隅のさらに隅っこ。とことん治安の悪い裏街。生まれながらにしてそこが私の生きる場所になった。当然赤ん坊な私に生活能力はあるわけもなくてほぼ死にかけていたが、そこを気の狂った女に気紛れに拾われて何とか生きることが出来た。私が5歳の時、その人は死んだ。薬に溺れて死んだその人を土に還して、そこから私は独りで歩き始めた。
コンナセカイデモ、ゼッタイイキヌイテヤル。
必死だった。体術を覚え、勉学に励み、成人してからは商談も極め、色も体得した。気がつけば裏街で友人が出来て、私を筆頭とした6人のグループが出来上がっていた。しかし、だからといって安泰などではなく、それからも生きるか死ぬかの生活で、毎日仲間がボロボロになっていた。略奪やら喧嘩やらが原因だ。私は仲間が傷つくのを許せなくて、いつも守ることに全力になった。
ナカマダケハ、キズツケサセナイ!!
いつしか生きることより、そちらの方が重要になっていた。私が生きるより、彼らが生きて幸せになってくれれば…そう、毎晩願いながら眠りについていた。
そんなある日。
"あの日"が来てしまう。
ウォール・マリアが、巨人に侵略された。
仲間はみんな、目の前で死んだ。
目の前で踏みつぶされた。
目の前で引きちぎられた。
目の前で喰われた。
助けようとした。数少ない爆薬を投げつけたり、此方に手を伸ばす彼らの手を掴もうと私も手を伸ばしたりした。でも爆弾は効かないし、手も届かなかった。助けられなかった。私の生きる理由が目の前でぐちゃぐちゃに消えていった。
許せない…
自分も巨人も…!
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない……!!
『ああああああああああ!!!!!!』