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箱庭【夢小説の庭】

第3章 【短編】待ち恋




「んん、っ…」
「は、…良い顔しやがる。」
「やっ…見ないでください…!」
「断る。…近くでこの顔を見たいと、俺はずっと渇望していた…漸くそれが叶ったんだ。」
「あ…っ、」
「最高にいい気分だ…なあ、もっとよく見せろ。」


間近にある、兵長の瞳。それは…とても見覚えのあるもの。至近距離で見つめてみて分かる。

睨みつけられていた、と決め込んでいた私。視線を感じれば恐がって逃げてばかりいた。気になって振り返って視線が合ったとしても、それは逸らされて…あれは…もしかして、照れていたのかな。

だから知らなかった。

まるで、熱に浮かされたような、情熱を滲ませたような瞳をしていただなんて…─

ドクン
ドクン

胸が苦しい。顔が熱い。顔だけじゃない。身体中が熱に浮かされたみたいに疼く。

…これが、もしかして。

戸惑いながらもその気持ちは確信を持っていく。はっきりとしていく。ああ…この感情は、


"好き"という言葉にしかならない。


「もう一度言う。ロゼが好きだ。」
「…へ、ちょ…っ、」
「俺のものになれ。」
「───っ!」


再び唇を塞がれれば、もう逃げようだなんて思えなかった。

寧ろ…ずっと捕らわれていたい、だなんて。

─…気づけば、私はその逞しい胸に体を寄せていて彼の背中に腕を回していた。それをきっかけに口づけも、甘く激しくなっていく。キスの吐息の隙間から何度も聞こえる愛の言葉。私はそれに応えるかのように、背に回した手で彼の服をぎゅうぎゅうと掴む。


離さないで。と、縋るように…─








「…というわけなのです。」
「なるほどねー。おめでとうロゼ!」
「ありがと…って、驚かないの?」
「何で?」
「だ、だって…っへ、兵長が、私を好きだった、とか…」


先日の、現実に起きたという事が有り得ないような夢話を相談の結果報告も兼ねてペトラに暴露すれば、素直な祝福が返ってきて、思わず尋ねた。

すると彼女は笑いながら言った。兵長の様子は私に恋してるとバレバレだった、と。しかもペトラ以外の周りも気付いていたらしい。(寧ろ、やっとか…と噂されている程だとか。)

どうやら知らなかったのは私だけだったみたい。
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