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箱庭【夢小説の庭】

第3章 【短編】待ち恋



此方に体を向けたけれど、未だに動かない兵長。俯いたままの姿が少しだけ弱々しく見えて、何となく罪悪感が湧くものの、許す気はない。かといってこのまま責め続けるのも心臓に悪い。私の。

動かない兵長をそのままに、私は旧本部の出入り口を目指して踵を返した、

瞬間。


─グイッ!!


「!?な…っ!」


─ドサッ!!


天地がひっくり返って背中に衝撃。でもそれよりも心臓のリズムが異常で、さらにこの状況も異常で、痛みさえ感じなかった。

あるのは、恐怖。

腕を痛いくらいに掴まれて、振り向かされた先には物凄い形相の兵長がいて。ひっ、と情けない声をあげた時には自分の身体が宙に浮いていた。あっという間に足を払われて、地面に押し倒されて、目の前には睨みを利かせている兵長に覆い被されていて。

あ、私、殺される。


「…おい、ロゼよ。」
「は、はいぃ!!」
「さっきから黙って聞いてれば…ペラペラと好き勝手なこと言いやがって。」
「も、申し訳ありません!!」
「それに、よく考えてみろ。俺が嫌いな奴相手にあんな甘っちょろいやり方でイヤがらせすると思うか?」
「…や、どうでしょう…?」
「あ?」
「しないと思います!」


ヤバイヤバイ!もう手遅れだった!あんな失礼なことを言った過去の私を今すぐ取り消したい!間近にある兵長の顔を見ないように、必死に目を瞑る。再び般若のような表情を見たが最後、私は失神する。絶対!

頬を滑らす兵長の冷たい手に体がぶるぶる震える。少し沈黙があったかと思えば、次の瞬間には耳元に吐息を感じて、ぞくり、と体に何かが走っていった。


「ロゼ…」
「っや…兵長…!」
「…まだ、気付いてくれねぇのか?」
「な、何をですか、?」
「だが、気付いてなくても諦めろ。」
「は、い…?」
「俺はお前の言うとおりに待ってやったんだ。もう何年も。いい加減我慢がきかねぇ…悪いが俺のやり方でロゼを俺のものにする。」
「……え?」

「ロゼ、お前が好きだ。」


───…何、それ……

驚きに目を開いて凝視するも、聞き返す前に唇を塞がれ、彼の手のひらによって目も塞がれた。
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