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箱庭【夢小説の庭】

第3章 【短編】待ち恋




─…サラ、


……何だろう…?髪に感覚が…梳かれてる…?

うとうととそんなことを思っていると、今度は優しい声が降ってきた。


『まだ…気づかねぇのか?』


心地いい声…誰なんだろう?何に"気づかない"のだろう?何なのかさっぱり分からないけど、その切なげな声に寄り添いたくなる。

ちょっと待って、もうすぐ意識が戻りそう…


『いい加減、近くにいてぇ…ロゼ…』


──…え…


唇に触れた温かさに、一気に覚醒する。


これは…間違いなく、キス…だよね。内心パニックになりながら、そっと両の目を開く。

そして思わず声があがる。


「んんっ!?」
「!…ロゼ、」
「…へ…へい、ちょう…?…なん、で…?」


まさかの兵長。そのことにびっくりして思わず彼を突き飛ばした。そのままの勢いでその場に立ち上がって、徐に唇を触る…まだ、感覚が残って…いやいやまさか、と頬を抓る。痛い。え、でも、だって…兵長は私のこと嫌っているはずで…

…どういう、ことなの…?

パニックになりつつも視線を兵長に向ければ、彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、私に背を向けてしまった。


「…あの…」
「……こんな所で無防備に寝るんじゃねぇ。」
「え…?」
「今みたいに欲求不満な男に襲われかねねぇぞ。」


─…欲求、不満……?


何、それ…女なら誰でもいいってこと?そんな理由で、私の、ファーストキスを?私に背を向けて立つ兵長は、さっきから微動だにしない。当然、目も合わない。

…何よ。いつもはしつこくこっちを睨みつけているくせに!


「…っ…酷いです、初めてだったのに!」
「……、」
「何なんですか、兵長は!私、何かしましたか!?兵長の嫌がることしましたか!?どうして私を嫌うんですか!?」
「!待て。俺は嫌いだなんて一言も言ってねぇ。」
「嘘!あんなに痛いくらい睨まれて嫌いなはずないです!大体なんで私なんです!?もう見ないでくださいよ!!」
「っそれはお前が、」
「睨むだけでは飽きたらず、寝込みを襲うって…いくら嫌いでも、さすがにこれはあんまりです。嫌がらせにも程があります!」


ファーストキスを奪われた悲しみより怒りが勝って、口が勝手に兵長を責める。

ああ、普段の私ならここまで出来ない。でもさすがに酷すぎるもの。女として黙ってられなかった。
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