第2章 【短編】溶け合った希望
─…え?
耳元で聞こえる声は、幻聴?
体に纏わりつく温度は、幻なの?
目の前にある顔は…─
「…ゆ、め…?」
「ちっ。出来るなら夢にしたいもんだ。こんな穢らわしい場所にくる羽目になるとはな。」
「え、」
辺りは相変わらずおどろおどろしい赤。でも状況が違う。彼は私の腰の辺りを片腕でがっしりと抱え込んで、片手はワイヤーを掴んでバランスを取っていた。この腰に回る温かさは本物だ。夢じゃない。それにしても、いつの間に私をあの下にある血沼から掬い上げたのか…とぼんやりしていたが、はっとする。
………巨人の腹の中なのは変わらない、のに。
…ねえ、まさか
兵長も食べられて…?
「兵長、何で此処に…」
「あ?」
「何でこんな場所に!?それに、何してるんですか!!」
「見りゃわかるだろうが。お前を…」
「私なんかどうでもいいんですよ!人類の希望である貴方が死んでしまったらどうするんですか!」
「は?」
「私を置いていってください!兵長は早く脱出してもっとたくさんの人を救ってあげてください!」
じたばたと暴れるも、彼は相変わらずがっちりと私の体を抱えたままだ。でも暫くすると、私を俵担ぎしてガスを勢いよく噴かした。彼は私を抱えながらも立体機動装置を器用に使いこなし、あっという間に上の方まであがってこれた。
そしてある程度上に来た瞬間、彼は片手でブレードを構え、ある一点を瞬時に往復して一気に削いだ。
「……っ!、外…だぁ…!」
どうやら今の部分は項だったみたいで、私たちが飛び出してきた巨人は事切れて倒れはじめた。食べられても諦めず、内側からも討伐してしまうとは。やはり"人類最強"の名は伊達じゃない。
すとん、と音もなく着地したかと思えば、辺りにわっ!と人が集まってきた。中にはさっき助けた人もいて、思わず笑顔になる。そして、実感する。
私、生きてるんだ。