第2章 【短編】溶け合った希望
そして、どうやらその予感は当たったらしい。
あかい
赤い
アカイ
奇妙な紅い世界は紅いだけではなく、まるで地獄絵図のような景色をもたらしていた。ドロドロの液体にこの身を浸からせて、辺りには呻く人らしき物体。中にはぐちゃぐちゃに潰れた者も浮いている。上は…高すぎて見えない。
そう、此処は…
巨人の腹の中。
「やっちゃった…」
かろうじて五体満足なものの、立体機動装置は固定ベルトが切れてしまったことによってこの血沼のような体液の中に沈んでしまったため、脱出の術はない。私は此処で死ぬのだ。
『くっそ…!こんなところで…!』
『くっ、大丈夫!?』
『…えっ…ロゼさん!?』
『逃げて!』
『どうしてあなたが…!』
『早く逃げて!!』
『わあっ!?っロゼさ、』
─バクンッ!
─ごくんっ!
…巨人の口の中で喰われそうになっていた仲間を押し出す為に自らそこに飛び込んで、それで食べられちゃうなんてね。本望といったら本望だけれど。
心残りは一つ。私の敬愛する兵長の命令に背いてしまうことが残念だ。
「リヴァイ兵長…」
私に生き方を示してくれた。
私に戦い方を教えてくれた。
私に優しくしてくれた。
私を信じてくれた。
リヴァイ兵長は私の誇りで…いつしかそれ以上になっていた。
誰よりも愛おしい存在。
…貴方は知らないだろう。私の生きる意味に貴方が一番大きく関わってたこと。貴方のために私が生きようとしたこと。
…貴方が私の"新しい生きる希望"になったこと。
リヴァイ兵長…
リヴァイ兵長、リヴァイ兵長…
ああ、会いたいな。また、褒めてほしかったな。また、頭撫でてほしかったな。
………身体が沈んでいく…
そろそろ浮いていられるのも限界らしい。
「リヴァイ兵長…ごめんなさい…」
貴方のお陰で、私は生きれた。お願いです。貴方は死なないでね。これから私が記憶の中で生きるために。
貴方だけはどうか。
「リヴァイ兵長…さよう、なら…」
「馬鹿が。命令に背くんじゃねぇ。」