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箱庭【夢小説の庭】

第2章 【短編】溶け合った希望



変な使命感からがむしゃらにやってきた結果、私なんかにも兵長のような肩書きがついた。私はそれにいつも眉を顰めていた。絶望の淵に生まれた私が、まさか希望の代名詞で呼ばれるだなんて。

"救世主"…なんて。

何回目かの壁外調査当日。口々に言われる肩書きに胸が痛む。私はまだまだ弱いから、全てを守りきれない。そんな肩書きは似合わない。私はそこまで大それた奴ではない。

ごめんなさい。きっとまた、失ってしまうかもしれない。と、視線を下げてぼんやりしていると、誰かが頭をわしっと掴んできた。この手の温かさ、大きさはすぐ分かる。私の尊敬する兵長様だ。顔を上げれば苦虫を噛み潰したような表情が見えた。彼も彼とて"人類最強"の言葉に眉を顰めているようだった。


「ちっ…好き勝手呼びやがって。」
「兵長、すごいですね。"人類最強"だなんて。」
「お前も負けてないだろ。"救世主"。」
「…それは違う気が、」
「いつ何時も誰彼かまわず助けてるからだろうが。」
「……全てを、守れていませんから。」
「…仕方ねぇだろ。俺達は所詮ちっぽけな人間だ。いくらそれらしい肩書きがついていようが、限界がある。」
「でも、」
「ロゼよ。お前はよくやってくれている。俺が保証してやる。」
「兵長…」
「だが、頑張りすぎるな。とりあえず生きろ。いいな。」


ぽんぽん、と頭を撫でられた瞬間。団長の声が響いた。壁外調査が始まるようだ。くれぐれも深追いはするなよ、とリヴァイ兵長のいつもの言葉を聞いて、私は頷く。でも危ないと分かっていても、私の体は言うことを聞いてくれないのだ。

仲間を守りたい。それが私の生きる意味だから。絶対に捨てられない誓いだから。きっと彼もそれを知りつつ言っているのだろう。眉間の皺がすごいのが証拠だ。


「いいか。死ぬなよ。そして諦めるな。これは命令だ。」


─…初めて見た、懇願するかのような表情だった。彼は何かを予感してたのか、何だか怖かった。
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