第8章 *6*
女型の巨人とキュラ達が過ぎ去った後、馬を呼び戻そうとしているジャン。両手の薬指と小指を口に咥えて、ピィィーと高い音を鳴らす。
その間に、ライナーは包帯を出してはアルミンの頭に巻いていく。
「どうだアルミン、立体機動装置は?」
「大丈夫…留め具が正しく外れてくれたから壊れてはいないんだ。」
アルミンが落馬する際に、立体機動装置が取れてしまった。しかしながら、幸い壊れることはなく、良かったとばかりに話すライナーだったが、喜んでいる暇もない。
それは、何故かというと此処は壁外というわけで、いつ巨人が襲って来ても可笑しくはない。それだけではない。今は作戦中の為、孤立する可能性もある。
だが、問題がある。それは、馬が一頭しかいないということだ。壁外の場合は、必要不可欠だ。一頭だけでは移動ができない。
「ジャンの馬が戻って来れば3人とも移動できるんだが…。」
ライナーは、アルミンの治療をしながら一生懸命吹いているジャンの方をチラッと見ていた。
──…クソ…何でだ…。ライナーの馬は戻ってきたのに…どうしてオレの馬は戻ってこねぇんだよ…。これ以上ここに留まるわけにはいかねぇのに…最悪1人をここに置いていかんとならねぇぞ…。
ジャンの頭の中は、半分パニックになっていた。それもそうだ。今は、馬は一頭しかいない。馬に対して、人間は最高で2人ぐらいまでしか乗れない。
今、ここにいるのは…アルミン、ライナー、ジャンの3人だ。色んな最悪な選択肢しかない。ジャンは、チラッとアルミンとライナーの方を見る。
──手負いのアルミンか?デカイから2人乗りがキツそうなライナーか?それとも…オレが走って自分の馬を探すべきか?