第3章 変化
「これからは、苗字で呼んだらペナルティだ。」
「……はあ!?」
甘い雰囲気もそのままに赤司くんはご機嫌でそう告げる。ペナルティとは。そして、なんだその設定。驚きと動揺がそのまま顔に出ていたのだろう、赤司くんはくすりと笑ってから、続ける。
「めぐみさんがオレを苗字で呼ぶたびに一つペナルティを課す。逆もまた然り。」
「ちょ、ちょっと待って、そんないきなり変えられないよ!しかも赤司くんが間違えるとか、」
「はい、ペナルティ。」
「え、んぅ…!」
赤司くんが苗字と名前を呼び間違えるとかないでしょ、と。言い出した本人なんだから間違えないでしょ、と。そう続けたかった私の言葉は、全部赤司くんの唇に食べられてしまった。先程の触れ合う優しい口付けとは全く違う、噛み付く様なキス。舌を吸われて絡められて、漏れる吐息と声がたまらなく恥ずかしいのに決して待ってはくれない。ちゅ、ぴちゃりと濡れた音がダイレクトに聞こえて、耳を塞ぐ事も出来ずにぎゅっと目を瞑った。息も絶え絶えにようやっと解放されて、ぐったりする私とは正反対に赤司くんは楽しそうだ。
「ちょ、待って、あかしく…!」
「ペナルティ。」
「あっ!」
最後に首筋にまで降りていく唇に焦って再び名前を呼べば、それが苗字だった事にハッと気付く。ちぅ、と肌を吸われる感覚に慣れなくて、腰がムズムズする。そのまま体をいやらしくなぞられて、胸元を肌蹴させられてどんどん唇が落ちていく。際どい部分にも舌を這わされ、吸われ、嬲る様になぞられる。自分から漏れ出す甘い声に耐えきれなくなって必死に声を殺しても、漏れる吐息が甘くてクラクラした。
「せいじゅ、ろう…!」
「!」
必死に、求められている名前を言えばピタリと動きが止まった。そのまま堪えるように抱き締められて、はぁ、と熱っぽい吐息が落とされる。息を切らしてその様子を見つめる私に、征十郎くんは妖艶に笑って再度口づけた。今度はちゃんと名前を呼んだのに、ペナルティではないのに、そう思っても気持ち良さには抗えない。どろどろに甘いその口付けに酔いしれながら、「ご褒美だ」と呟く彼にどうしようもなく溺れている自分が居た。