第3章 変化
「赤司!?!?!」
驚き過ぎて言葉も出ないとはまさに今の様な状況だろうと、何処か冷静な思考で咄嗟に考える。その言葉通り絶句している私と、何が何だか状況が分かっていない葉山くんとその友達と、まるで葉山くんを射殺さんばかりにギラギラと睨みつけている赤司くん。不思議なトライアングルだった。見つめる視線が四つ赤司くんに重なっているのに、彼は躊躇するどころかものすごい形相で葉山くんを睨んでいる。私もあまり状況を理解できていないけど、そんなことをすっ飛ばしてでも『怖い』と思った。
「もう一度言う。葉山、中山7さんから離れろ。」
「えっ!?めぐみさんって赤司と知り合いなの!?」
「え、あ、いや、知り合いと言うか…。」
赤司くんは再び同じセリフを葉山くんに放ったけれど、その言葉のせいで葉山くんは私と赤司くんが知り合いだという事が分かったわけで、従う事なく私へと一気に問い詰める。私の連絡先を急かすあまり、すぐ隣でかなり近い距離に居たため葉山くんの顔は目と鼻の先だった。動揺する葉山くんは、咄嗟に私の腕を掴む。その近さと行動に驚いたのと、素直に関係を言えなくてしどろもどろになっていれば、視界でゆらりと動く赤い影。
―――ダンッ
瞬間、目の前を風が横切る。葉山くんと私を仕切る様に吹いたその風の正体は、私と葉山くんの後ろの壁に勢い良く手をついた赤司くんの腕だった。数秒の沈黙ののち、綺麗に揃って固まる私と葉山くん。目の前に赤司くんの腕があって遮られているためにその表情は見えないが、私と同じく、いやそれ以上に冷や汗を流しているだろう葉山くんに申し訳なくなった。赤司くんがここまで追いかけてくる原因を作ったのは私だろうが、その怒りを何故か向けられている葉山くんはたまったもんじゃないだろう。半ば涙目になっていると、上から更に声がかかる。