第1章 出会い。
雨が降る夜。
「だから、誤解だってば」
『なにが誤解?ご丁寧にキスまでして、これのどこが誤解だって言うのよ!』
「ハル。頼む話聞いてくれよ」
そう言って私の腕をグッと掴むから差してた傘が勢い余って転がる。
数時間前、たまたま友達に誘われて行ったBarで、今日は残業だから帰りは遅くなると言っていた同棲中の彼氏が他の女とイチャついてるのを見てしまった。
『痛い。離して!』
立ち去ろうとする私の腕を掴んで彼が離してくれない。
『もぉ。。。いい加減にしてよ!』
怒りに任せて自由にならない腕のかわりに足で彼を蹴飛ばした。
「いってぇ。。。ったく!お前のそう言うところが嫌なんだよ!」
『はぁ?なにそれ!』
「もっと女らしくしろよ!お前といると息がつまる!」
『。。。っ!』
私は彼の腕を思いっきり振り払って傘を拾うのも忘れてその場を立ち去った。
後ろで彼が何か言ってたけどもうそんなのどうでもいい。
『はぁ。。。寒。。。。傘。。。』
傘を置いてきてしまったせいで、少し強めに降る雨のせいでもう全身びしょびしょ。
ふと立ち止まったショーウィンドウに映る自分の姿を見て情けなくなった。
『なに。。。してんだろ。。。はは。。。』
私は力なくその場にしゃがみ込んで。。。
『なに。。が。。女らしくだよ。。。ふっ。。うっ。。。』
自分の姿が情けなさ過ぎて泣けてきた。
私はフラフラと立ち上がり、行く当てもなくて近くの行き着けのクラブに入った。
ずぶ濡れの私を周りの客がジロジロと見るけどそんなの気にせずカウンターまで一直線。
「ちょっと!ハルちゃんどうしたの!?」
私のずぶ濡れのカッコにビックリして言った。
「とにかく髪拭いて!ほら!」
そう言って優しくしてくれるのはソンさん。
ここのクラブのオーナーでもあり、バーテンだ。
『ソンさん。テキーラショットでちょうだい!』
「え?でも。。」
『いーからちょうだい!』
ずぶ濡れなのに遠慮する事もなくカウンターの椅子に腰掛ける私。
渡してくれたタオルで濡れた髪を絞るように拭く。
「はい」
ため息をつきながらソンさんが私にテキーラを渡す。
それを私は一気に飲み干した。
その時だった。。。
「ぶっ。。すげぇ女w」
『は?』
声のした方を睨むように見た。。。