第1章 悲しみ
~ロードサイド~
ドアを閉めた後、僕は寄りかかって
飴を舐めた。
「ティッキーも素直じゃないなぁ~...。
あの時みたいに泣けばいいのに。
ノアじゃないから涙が勝手に
出てくることはないのかなぁ?」
そっと自分の顔に触れる。
涙は、まだ流れていた。
「ティキのノアが泣いてないなら...
僕のノアが特別なのか、それとも......。
この涙は、僕自身が泣いてる証なんだよねぇ?」
誰にともなく呟くと、
目の前にレロが現れた。
「ロードタマ!...泣いてるレロか?」
「うん。悲しいんだよぉ」
「そうレロか...?その割にはロードタマ、
楽しそうレロ」
楽しそう?僕が?
そりゃそうだ。
僕は夢のノア。
― 敵となったリランを殺すのは僕?
それともティッキー?千年公?アクマ?
考えるだけで楽しい。
例えばティキ。ティキは彼女を殺せるだろうか?
込み上げる笑いを押さえ、
でも、ふと悲しくなった。
「リラン...さよなら、僕らの歌姫。
―――ごめんね、僕の娘」
「ロードタマ.......」
気遣うように(傘のくせに)覗き込んでくる
レロを掴む。
「うわっ!?ちょっ、ちょっとロードタマ!」
「千年公のとこ遊びに行こぉ!」
「分かった、分かったから離すレロ~!!」
笑い声が空間にこだました。