第1章 悲しみ
ロードはなおも言葉を続けた。
「その力を持っていることで
リランは僕の娘だった...。
でも、ティッキーのせいで
その力を消されちゃったでしょ?
だから、リランはもう僕の娘じゃなくなったんだよ」
責めるような目と言葉をぶつけてくる。
「娘じゃなくてもリランは気に入ってたのにぃ...
苦しかっただろうなぁ、可哀想に。
ティッキーどうしてくれるのぉ?」
「俺ばっかり責めんなよ。
本当は、俺だって.......」
言葉は尻すぼみになり、消えた。
ロードが楽しそうに微笑む。
「へぇ、やっぱティッキーも悲しいんだぁ~」
「うるさい。ほら、飴でも食ってろよ」
口に飴を突っ込むと、ロードは
ごくんと飲み込んだ。
「せっかく心配してんのにぃ~。
ティッキーってば冷たぁい」
「心配せんでいい。あっち行け」
しっしっと手を振れば、
ロードはドアへ歩いていった。
「....まあ、いいよぉ。レロで遊ぶからぁ。
じゃあね、ティッキー」
パタンとドアが閉まる。
見送った俺は、ワインを一気に飲み干した。
「歌姫は消えた...これで、
あいつと味方として会うことはねぇかな」
額にかかる前髪をかきあげる。
遠くにいるリランへ向かって、
俺は不敵に笑ってみせた。
「じゃあな、リラン...よい夢を。
次に会う時は敵同士だ」
笑いと共に零れたのは、一粒だけの涙だった。